中小企業診断士1次試験では、「過去問が最重要」と言っても過言ではありません。単なる練習問題としてではなく、出題者の意図や試験戦略を見抜く最高の教材として、過去問を最大限活用することが合格への近道になります。
この記事では、過去問が重要とされる理由を5つの観点から解説し、あわせて直前期に取り組むべき論点や勉強スケジュールも紹介します。
1. 出題傾向が繰り返されやすい
中小企業診断士試験では、同じテーマや論点が数年おきに再登場する傾向があります。
たとえば、財務会計ではCVP分析やNPV、回収期間法がほぼ毎年出題されています。経営法務では会社法の「機関設計」や知的財産の「特許要件」、運営管理ではP-Q分析やレイアウト、購買管理などが定番です。
このように「また出る論点」が読めるため、過去問を使えば効率の良い学習が可能になります。
2. 言い回しや形式に慣れることができる
診断士試験の選択肢は、一見すると正解のように見えて実は微妙に誤っている、というケースが多くあります。
たとえば、「〜であるが、常にそうとは限らない」や「〜することがある」「〜しなければならない」といった曖昧な表現です。
こうした試験特有の文章表現に慣れておくことで、本番での読解ミスを防ぐことができます。
3. 得点すべき問題と捨てる問題の見極めがつく
過去問を繰り返していくと、「頻出で確実に得点すべき問題」と「応用的で難易度の高い問題」との区別がつくようになります。
その結果、合格ラインの60点を超えるためにどこで点を稼ぐべきかが明確になり、難問や奇問に時間を取られることがなくなります。試験当日の戦略的な時間配分にもつながります。
4. 科目ごとの得点戦略が立てやすくなる
過去問から見える傾向により、各科目が暗記中心なのか、理解中心なのか、計算中心なのかといった特性が把握できるようになります。
たとえば、経営法務は過去問を暗記することが得点につながりやすく、財務・会計は計算パターンを体に覚え込ませることが必要です。経済学はグラフや数式に慣れておくことが重要で、中小企業政策は毎年数字が更新されるものの出題パターンは似ています。
5. 本番と同じ感覚で解答トレーニングができる
過去問は、本番と同じ出題形式・分量・時間感覚で解ける唯一の教材です。
1次試験は7科目を2日間にわたって解く長丁場です。知識だけでなく、集中力や試験体力も問われます。
本番直前期に、時間を測って過去問を解くトレーニングを積むことで、当日のパフォーマンスは大きく向上します。
過去問の活用ステップ
- まずは1年分を初見で解いて、実力を確認します
- 解説を読みながら、出題意図やひっかけポイントを理解します
- 類似の問題をテキストや問題集で復習します
- 再度過去問を解いて、知識を定着させます
過去問は「問題集」ではなく「戦術書」
過去問は、出題傾向を把握し、得点源を見極め、試験慣れをし、学習効率を高めるための、もっとも効果的な教材です。
「ただ解いて終わり」ではなく、戦略的に活用することで、合格にグッと近づけます。
直前期(5月29日〜8月2日)の重点論点リスト
以下は、今から試験までの約2ヶ月で重点的に取り組みたい論点です。
企業経営理論
ポーターの競争戦略(コスト・差別化・集中)、組織構造、モチベーション理論、MBOなど
財務・会計
CVP分析、NPVと回収期間法、財務指標分析(ROE・流動比率)、減価償却など
運営管理
P-Q分析、設備配置、在庫管理、品質管理(管理図・特性要因図)、棚割・POPなど
経済学・経済政策
需要供給曲線、価格弾力性、市場構造(独占・寡占)、乗数理論、GDPとインフレなど
経営法務
会社法の機関設計、特許要件、商標・契約の基礎、知的財産の保護対象など
経営情報システム
クラウド(SaaS・PaaS・IaaS)、暗号化、ERP・CRM・SCM、データベース正規化など
中小企業経営・政策
中小企業の定義、持続化補助金や事業再構築補助金、信用保証制度、白書の統計など
6月〜7月の勉強スケジュール例
6月前半:基礎と過去問の論点整理
1日1〜2科目ずつローテーション。過去問を解いたら、間違えた問題を復習。
6月後半:アウトプット中心へ切り替え
1日2セット(過去問→解説→復習)。苦手論点は図解やノートで整理する。
7月前半:総復習と弱点克服
1週間で7科目を1周するペース。中小企業政策はこの時期から集中して詰め込む。
7月後半:本番形式で練習
過去問や模試を本番と同じ時間で解く。解ける問題を確実に取り切る訓練を行う。